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便利屋直伝!生前整理が完了する進め方を「もの・情報・財産」別に紹介します

生前整理を始めたはいいものの、進め方が分からないというご相談をお聞きします。実は、生前整理は、闇雲に始めると困ることのひとつです。片っ端から手を付けた場合、「終わらない」「片付かない」「かえって散らかる」といった難題に直面してしまうためです。

 

そこで今回は、生前整理の進め方を、具体的にわかりやすく解説します。記事では「もの」「情報」「財産」の項目に分けて進め方を紹介しますが、気になるところから読んでも構いません。

 

整理したいと思っているもの、片付かなくて困っているものをイメージしながら、読み進めてみてください。

生前整理の進め方<全体像>

生前整理とは、自分が元気なうちに持ち物や財産、思い出を整理することです。家族にかかる遺品整理の負担を軽減できるだけでなく、身の回りをスッキリさせて人生を軽やかに生き切ることにもつながります。

 

生前整理では、次の2点を心掛けるとスムーズに進みます。

 

  • 大切なものを「誰が見てもわかる」状態にする
  • 遺族への意思表示を明確にする

 

これまでの人生で集めたもの、貯めたものの整理は、簡単ではないかもしれません。だからこそ、大切なものを再発見し、残りの人生を自分らしく生きるきっかけづくりと前向きにとらえ、できるところから進めていきましょう。

 

生前整理の進め方1.形ある「もの」の片付け

はじめに、形ある「もの」を生前整理する際の進め方を、4つのステップに分けて解説します。
形あるものとは、家の中にあるものすべてを指します。食器や衣類、タンス、書籍から、思い出の品や子どもの作品、成績表など、あらゆるものです。

 

ステップ(1) 生前整理したいものの、保管場所と量、種類を把握する

ステップ(1)は、全体像の把握です。むやみに手をつけるのは、結局片付けきれず、家の中が散らかる要因になります。生前整理したいものがある場所と量、種類を把握しましょう。

 

家の中を歩いて回り、場所ごとにしまってあるものをメモに書き出す方法がおすすめです。また、書き方は自分が把握できればOK。細かさや正確さにこだわらず、サッと書き進めましょう。

 

  • 座敷の押し入れ/来客用座布団/20枚くらい
  • 2階クローゼット/長男の学用品/9年分……といった具合で十分です。

 

ステップ(2) ものを整理する基準を決める

次に、ものを整理する基準を決めます。残っているものが多いと、万一の折りに家族が遺品整理に手間取ります。不要なものは思い切って処分し、家の中にあるものの量を減らせるよう考えてみましょう。

 

ものを処分する基準の例を紹介します。

 

  • 1年以上使っていないものは捨てる
  • サイズが合わない服は、捨てる
  • 子どもの持ち物は、子ども本人に確認してから処分する
  • 思い出の品は、写真に撮ってから処分する
  • 貴重なものや価値があるものは、譲る
  • まだ使えるものは、リサイクルショップに持ち込む など

 

基準がないと、「もったいないから」「いつか使うかもしれないから」と、家に残しつづけてしまい生前整理が完了しません。自分が納得できる基準を決め、書き出しておくのがポイントです。

 

ステップ(3) 基準に従って片付ける

ステップ(1)でものの全体像が把握でき、ステップ(2)で処分の基準が決まりました。ステップ(3)では決めた基準に従い、どんどんものを片付けていきましょう。

 

ポイントは、家中を一気に片付けようとしないことです。「今日は引き出しひとつ」「タンスひとつ」と、場所を決めて、無理なく進めます。

 

途中で思い出に浸り、時間が過ぎてしまっても、それもまた生前整理の醍醐味!思い出も十分にかみしめれば、思い切って整理する踏ん切りもつくというものです。

 

ステップ(4) 保管するものは「誰が見ても分かる状態」に

引き続き保管するものは、誰が見ても分かる状態にします。どこに・何があるか一目瞭然になっていれば、遺品整理をするお子さんの作業がはかどり、感謝されるでしょう。

 

<誰が見ても分かる状態の例>

  • 保管ボックスに、中身書いたラベルを貼っておく
  • 中身が見える透明なケースに保管する
  • 自分の死後、どのように処分してほしいかメモを残す
  • どこに、何があるかを一覧表にまとめておく など

 

生前整理の進め方2.デジタル情報やデータの片付け

デジタルデータには、個人情報や他人に知られたくない情報などが含まれます。秘匿性を保つため、デジタルデータも元気なうちに整理しておきましょう。

 

デジタル情報の種類

デジタル関連の情報とはパソコンやスマートフォン、タブレット本体そのものと、本体に保存されたデータ類を指します。近年は「クラウド」といい、インターネット上に保管されたデータもあります。

 

<デジタル関連情報の具体例>

  • メール
  • 画像
  • 文書
  • SNSアカウント
  • 暗号資産(仮想通貨)
  • 電子マネー
  • 各種サービスに登録しているIDとパスワード

 

登録して時間が経ち、忘れてしまっているサービス等もあるかもしれません。デジタル関連のデータへは本人以外のアクセスは至難です。生前整理の機会に、できるだけすべての情報をまとめておきましょう。

 

ステップ(1) 見られたくない情報を削除する

まず、自分の死後、家族を含めたすべての人に見られたくない情報を削除します。いますぐに消せないものは、パソコンのデータを自動消去するアプリを使っても良いでしょう。

 

<Tips>パソコンのデータを自動消去するアプリ2つ
死後の世界
事前に登録しておいたドライブやフォルダ、ファイルなどを消去するフリーソフト。消去日時は、年月日指定もしくは最終起動日からの期間指定。
※ Windows版のみ

僕が死んだら…
死後、遺族がパソコンを起動してデスクトップのショートカットを開くと、作成したメッセージが表示される。その間に、事前に登録したファイル・フォルダが消去される。

 

SNSのアカウントは、放置すると悪用される危険もあります。IDとパスワードを信頼できる人に預け、対処を依頼しておくと安心です。

 

ステップ(2) 使っていないサービスは解約する

もう使っていないのに、なんとなく継続しているサービスはないでしょうか。クレジットカードの利用履歴や銀行口座の引き落とし履歴をチェックし、解約できるサービスはすべて解約しておきます。

 

Amazonプライムなどのサブスクリプション(定期)サービス、NetflixやHuluなどの動画配信サービス、フィットネスクラブなどは、要チェックです。死後、利用していた金融機関が凍結されると利用料の引き落としができず、家族に督促状が届く場合もあります。

 

ステップ(3) デジタルデータの種類とログイン情報をまとめる

まだ使っているサービスや、自分が亡くなってから解約してほしいサービスなどの情報は、一か所にまとめておきましょう。

 

サービス名とログインに必要な情報を、一覧にまとめます。その上で、パートナーやお子さんなど、信頼できる人に預けます。金庫や貸金庫に保管し、そこにある旨を伝えても良いでしょう。

 

自分の死後、どのようにして欲しいかも書き残せば、遺された人が戸惑わずに対処できます。

 

生前整理の進め方3.財産関連の整理

遺産や相続が親族に禍根を残さないよう、財産関連も整理しておきます。「大した財産はない」と思っても、細かく見るといろいろとあるのが財産です。何を保有しているかをあらためて思い出し、まとめておきましょう。

 

財産の種類

「財産」と一括りにしていますが、内訳はさまざまです。資産の例を、以下にまとめました。

 

  • 預貯金
  • 保険
  • クレジットカード
  • 有価証券
  • 不動産
  • 自動車
  • 貴金属類、宝飾品
  • 骨董品、美術品

 

また、生前整理では、プラスの財産だけでなく、マイナスの資産も整理します。ローンや貸しているお金がないか、思い返しておきましょう。

 

ステップ(1) すべての財産を可視化する

はじめに、所有するすべての財産をまとめます。

 

預貯金なら、どの金融機関/支店/預金の種類/番号の口座に、いくらくらい入っているのか。どの保険会社で、どのような保険に入っているのか。どのブランドのクレジットカードを、何枚持っているのか…、情報を可視化してみてください。

 

また、使っていない口座やクレジットカードは、解約をおすすめします。保険証券や担当者の連絡先、不動産の権利証などの大切な書類は、すぐに取り出せる場所に保管しましょう。

 

ステップ(2) 相続について考える

相続も、現実的に考えておきます。相続のポイントは、次の2つです。

財産は、特別な意思表示(遺言書)がなければ、法定相続人が相続します。法定相続人が遺産分割について協議し、どのように相続するかを決定します。

また、相続した財産の額が基礎控除に収まれば、相続税は発生せず申告も不要です。

現金は比較的分割しやすいのですが、株や不動産は分割しにくく相続人同士で揉めることもあります。元気なうちに遺言書をのこし、相続について意思表示をしておくことも大切です。

 

遺言書について詳しくは後述します。

 

ステップ(3) 銀行口座の引き落としもまとめておく

「どの銀行口座から・何の料金が・いつ、引き落としされているのか」をまとめておくことも、大切です。

名義人が亡くなると銀行口座は凍結され、公共料金や各種サービス利用料などの引き落としができなくなるためです。放置すると督促状が届いたり、サービスが利用できなくなったりします。

 

遺族は必要に応じて、解約や引き落とし口座変更の手続きをしなければなりません。しかし、どの銀行で何の手続きが必要か、逐一把握するのは大変です。そんな時、銀行口座の引き落とし情報がまとまっていれば、慌ただしいタイミングで大きな助けとなってくれます。

 

引き落としされる項目と金融機関名・支店名、口座番号、引き落とし日を一覧にしてまとめておきましょう。

 

ステップ(4) 必要な場合は財産目録を作成する

財産目録とは、所有する財産をすべて記載した書類です。プラスの資産も、マイナスの負債も一覧表にまとめてあるため、相続や遺産分割協議の場面で役立ちます。

自分が持つ財産を可視化するためにも、便利です。

 

初めて作成する財産目録は、裁判所のホームページをチェックしてみてください。公開されているひな形に沿って書き込むと、財産目録が完成します。

 

生前整理の進め方4.エンディングノート

「エンディングノート」という言葉も、すっかり市民権を得た感があります。エンディングノートも、生前整理に欠かせないアイテムの一つ。役割や使い方を解説します。

 

エンディングノートの役割

エンディングノートとは、自分に関するあらゆる情報をまとめられるノートです。

 

もしものときに家族が困らないように、大切な情報を記すのが、主な目的。また、残りの人生をより良く生きるために、自分をあらためて振り返るきっかけとしても利用されています。

 

エンディングノートに書ける内容の例

エンディングノートは、さまざまなタイプのものが市販されています。書店に行き、気に入ったもの・使いやすそうなものを選びましょう。

 

ここまでに紹介してきたものや情報、財産に関する記録のほか、気づかないような細かなことまで記録できるようになっています。

 

<エンディングノートに記録できる内容の例>

  • 家族や知人:万一の際に連絡してほしい相手、親族一覧、知人一覧 など
  • 医療:かかりつけ医、持病、飲んでいる薬、延命治療・臓器提供に関する意志 など
  • 葬儀:希望のスタイル、宗教、葬儀社、費用、埋葬 など
  • 自分:学歴、好きなこと・嫌いなこと、これまで住んだ住所 など
  • ペット:ペット保険、かかりつけ医、自分の死後のお世話 など
  • その他:大切な人へのメッセージ など

 

<Tips>生前整理は、エンディングノートから始めるのもおすすめ!
エンディングノートは、書くだけで自分自身の振り返りになります。日ごろ意識しないことや、見逃していることを思い返す機会にもなり、生前整理に対するモチベーションも上がるでしょう。

 

生前整理をやりたいが、何から手を付ければ良いかわからないという場合は、エンディングノートからはじめるのもおすすめです。

 

生前整理の進め方5.遺言書の作成

遺言書は、ルールに則り正しく作成しなければなりません。せっかく作成しても、規定を満たしていないばかりに無効となる遺言書もあります。

 

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2種類があります。それぞれの特徴を、表にまとめました。

 

  自筆証書遺言 公正証書遺言
作り方 遺言者が、すべて自分で手書き、押印して作成する
財産目録のみ、パソコンで作成可能
公正役場にて、遺言者が証人2人以上に遺言内容を伝え、公証人が作成
公証役場で保管される
メリット 作成に費用がかからない
書き直しができる
自分以外に内容が漏れない
法律の専門家が、間違いのない遺言書を作成する
書き換えや廃棄の恐れがない
家庭裁判所の検認が不要
デメリット 要件を満たさないと無効になる
紛失や盗難のおそれがある
開封時、家庭裁判所の検認が必要
作成に費用と手間がかかる
2人以上の証人が必要

※ 参考:知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方|政府広報オンライン

 

遺言書の要件や様式は、厳密に決められています。管轄は法務省となるため、詳しくは法務省のホームページをご覧ください。

 

また、遺言書に残した内容を実行するには、遺言執行者と呼ばれる人が必要になります。相続人、あるいは第三者で適切に対処してくれる人を指定しておきましょう。

 

遺言書についての相談は、弁護士や司法書士、行政書士などが窓口になります。

 

生前整理を円滑に進めるポイント

思い切って始めた生前整理を、滞りなく完了させるにはコツがあります。3つのポイントを紹介します。生前整理を始める前、あるいはやる気がなくなったときに、参考にしてみてください。

 

思い出や感慨に浸りすぎない

生前整理していると、多くの「思い出のもの」「思い入れがあるもの」に遭遇します。そこにあったことすら忘れていたようなものとの出会いは、新鮮さと郷愁が入り混じった不思議な感覚になるもの。

 

つい、時間を忘れて思い出に浸ってしまうのも、よくあることです。

 

しかし、膨大なものを片付けなければならない現実を前に、思い出に浸ってばかりでは前に進めません。思い出や感慨に浸りすぎないように、ほどほどを心掛けましょう。

 

「一晩だけ」「3日だけ」と期間を決めて思い出をかみしめ、処分する。あるいは、写真に収めてものは処分する、といった方法がおすすめです。

 

処分に迷ったものは「とりあえず箱」に

生前整理を進めるなかで、どうしても処分できないものも出てくるでしょう。もう使わないと分かっているけれど捨てられない、子どものファーストシューズ。先に旅立った大切な友人とお揃いの雑貨。あるいは、仕事に関するものや価値があるものも、処分に困るかもしれません。

 

そんなときは、「とりあえず箱」を用意しましょう。いますぐ処分の判断ができないものを、文字通り「とりあえず」入れておく箱です。判断に迷ったものはこの箱に入れ、判断できるものをどんどん片付けます。

 

家の中が一通り片付いたら、とりあえず箱とあらためて向き合ってみてください。そのころには気持ちもスッキリ整理され、迷ったものも処分の判断ができるようになっているはずです。

 

大切なことほど言語化しておく

生前整理には、ものや情報を整理しながら「自分のこれまでを振り返る」「これからの生き方を考える」という役割もあります。

 

自分はどんな人間で、どのような人生を歩んできたのか。大切にしてきた思いは何か。家族や大切な人に伝えたいことは何か--。

 

生前整理を、普段あまり考えることのない「人生」と向き合う機会としてみましょう。

 

その上で、浮かんだ思いを言葉にしておきます。言葉にして残すと、あなたの思いが家族や知人にも伝わります。間際の折、「もっと伝えたかった」「しっかり言葉にしておきたかった」と後悔することもなくなるでしょう。

 

自分史を振り返る構成のエンディングノートもあります。自分に合った方法で、思いを言葉に紡いでみてはいかがでしょうか。

 

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まとめ

生前整理は、全体像の把握が成功のコツです。まず、片付けたいものの総量と場所を把握し、効率良く進められる手順を考えましょう。
また、判断基準を決め、ブレずに整理することも大切です。

 

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